水道管路のリスク対応と付帯情報の効果的活用に関する研究
本研究テーマにおける成果は、予防保全型の維持管理を実現に向けた既設の送配水管に関する維持管理の取組状況を評価する「水道管路維持管理評価支援ツール」と被災した際、受給者の早期修水を確保するために水道事業体が備えておくべき事前準備状況を評価する「災害対応評価支援ツール」を開発しました。
評価支援ツールの基本構想として以下の点について重点を置きました。
・評価するにあたって、被験者のウィークポイントが容易に把握できるツールであること
・ウィークポイントの課題解決に向けた支援ができるツールであること
本ツールの活用シーンやタイミングは以下の活用を想定しています。
・活用シーン :各職員がセルフチェックで使用※
・活動タイミング:事業計画の検討前や見直し、課題抽出、新入職員、若手職員への研修 等
※評価支援ツールには個々の意見を集計する「集計ツール」を用意しています
評価支援ツールは、「評価」、「結果」、「支援」の順に利用します(図1参照)。評価支援ツールはエクセルをベースに作成しており、ホーム画面から各ツールに移る構成としています。なお、「支援」には、維持管理と災害対応に関する事例集を収録していますが、事例集だけ閲覧したい方向けにホーム画面から直接事例集に移動できます。詳しくは評価支援ツールのPR動画を用意しておりますのでご覧ください。
図1 評価支援ツールの概要
水道管路維持管理評価支援ツール
水道管路維持管理評価支援ツールは「水道維持管理指針2016」(公益社団法人日本水道協会)から7項目(表1参照)に基づき、水道事業体の維持管理に関して評価するものです。
評価結果は棒グラフとレーダーチャートで示され、水道事業体が目標とする維持管理に対し現状が評価され、ウィークポイントが簡単に判断できます(図2参照)。さらに、ウィークポイントの解決に向けたヒントとして、維持管理に関する事例集(ガイドライン・マニュアル等、ヒアリング事例調査、管理帳票・記録項目例、参考文献論文等)を用意しています。
表1 維持管路の情報活用に関する評価項目
❶ 点検・診断/修繕 更新等 | 水道事業者等は水道施設の点検・診断を行い計画的な施設の修繕・更新に努める必要がある。 |
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❷ 基準類の整備 | 水道施設の維持管理・更新については水道事業者等は各種指針やマニュアル類を参考として実施している。 このため各種指針 やマニュアル類の改定等についての情報を収集し、 基準類を整備する必要がある。 |
❸ 情報基盤の整備と活用 | 水道施設の維持管理、更新に必要な情報については、 古い施設の情報が逸失している場合もあるため、 日常の維持管理上の情 報を電子化するなど、 水道事業者等において多角的に分析できるようにしておくことも重要である。 |
❹ 新技術の導入・開発 | 水道施設の維持管理・更新に関する技術については、 民間企業において多くの新技術が開発・導入されている。 今後もより一 層の新技術の開発・導入を促すべく、 水道事業の抱える課題を整理し、発信していくことが重要である。 |
❺ 予算管理 | 水道事業者等は近年、 人口減少や、 節水機器の普及によって料金収入が減少傾向にあるために、 老朽化した水道施設の更新を 実施できない課題を抱えている。 このような現状においても各水道事業者等は、中長期的視点に立った計画を策定し、更新対象 の重点化及び事業量の平準化を図りながら更新事業を進める必要がある。 |
❻ 体制の構築 | 水道事業等を支える職員数は、 減少してきており、 水道事業等の運営を維持していく上で、人材の確保・育成が課題となって いる。これらの課題に対し、 運営基盤強化を図るべく水道事業の広域化民間事業者等との連携を検討する必要がある。 |
❼ 法令等の整備 | ❶〜❻ に示す水道における現状と課題を踏まえ、 厚生労働省は平成25年3月に 「新水道ビジョン」 を公表しており、今後の水道 が向かうべき方向性等を具体的に示している。 この「新水道ビジョン」 を踏まえ、 水道事業者等は、水道施設の長寿命化を含め また行動計画である 「水道事業ビジョン」 を作成することが必要である。 |

図2 水道管路維持管理評価支援ツールの評価結果画面
災害対応評価支援ツール
災害対応評価支援ツールは「水道の耐震化計画等策定指針」(厚生労働省健康局水道課)の「地震対策の体系」に基づき、水道事業体の災害対応に関して評価するものです(表2参照)。
評価結果はレーダーチャートを応用したギャップチャート(災害対応の取組状況を視覚的に示したグラフ)というもので示します(図3参照)。ギャップチャートはギャップが大きいほどその災害対応に関する項目は十分な対策が出来ていないことを判定し、水道事業体のウィークポイントをすぐに判断できます。さらに、ウィークポイントの解決に向けたヒントとして、災害対応評価支援ツールには水道事業体が実施する災害対応の事例集を用意しています。
表2 災害対応評価支援ツール
主基準 | 副基準 |
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影響の最小化❶ (バックアップ) |
施設の複数化 浄水の確保 停電対策 系統連絡管等の整備 複数系統管、連絡管、ループ管等の整備 配水ブロック化、バルブの適正配置 |
影響の最小化❷ (給水の継続/二次災害の防止等) |
浄水薬品、燃料等の確保 構造物、地盤対策 薬品注入設備対策 斜面配管対策 消火用水の確保 |
復旧の迅速化 (応急復旧対策) |
復旧優先順位の設定 復旧が行い易い給水装置の整備 復旧資機材の確保 情報管理システム等の整備 復旧作業人員の確保 監視制御設備の整備 |
応急給水の充実 (応急給水対策) |
運搬給水基地の整備 拠点給水施設の整備 仮設給水場所の設定等 給水作業人員の確保 給水車、給水資機材の確保 |
危機管理体制の強化 | 初動体制の整備 受援体制等の整備 関係機関、住民との連携 防災訓練の実施 BCP、応急活動マニュアルの策定 広報、広聴体制の整備 通信設備、情報連絡体制の整備 |

図3 ギャップチャート結果画面
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