ホーム > 水道管路を維持するために > マニュアル作成手引き

マニュアル作成手引き

弁栓類点検(仕切弁、空気弁、減圧弁、消火栓、補修弁)

送配水管の弁栓類には、仕切弁、空気弁、減圧弁、消火栓、補修弁等があり、これらは、送配水区域内の適正な水量・水圧・水質の確保のため、管路と一体になって適正な機能を保持しなければならない。そのため弁栓類を良好な状態に維持するためには、点検・整備を行うことが重要である。また、良好な維持管理により弁栓類の長期使用も可能になる。
蓄積された点検情報は、弁栓類の点検計画の見直しや修繕・更新計画立案の際に活用することができる。

(1)作業手順

作業手順

・対象施設、点検頻度、点検方法等の計画を策定
・基幹管路を優先的に実施

・日常点検の実施
・定期点検の実施
・詳細点検の実施
・臨時点検の実施

・外観:水没、土砂溜り、漏水、変形等の確認
・開閉状態:正常に作動することの確認

・弁栓点検表へ点検結果を記録
・必要に応じて修繕工事を依頼

・点検結果を分析し、対象施設、点検頻度、点検方法等を見直し
・修繕計画、更新計画策定のための基礎情報として活用

(2)実施方法

1)点検対象施設

① 点検対象弁栓類を仕切弁、空気弁、減圧弁、消火栓、補修弁ごとに抽出する。
② 管路の重要度、事故時の影響度も考慮に入れて幹線管路等を優先的に実施する。
③ 断水を伴う点検に当たっては、事前にバルブ操作等を行って、開閉操作に支障がないかを確認し、必要に応じて補修整備する。

弁栓類の設置施設の重要度を表2.3.1に例示する。

表2.3.1 施設重要度一覧(例)
バルブの種類 施設の重要性 管路施設
仕切弁 幹線管路に設置しているバルブ及びその管路の分岐部に設置している第一バルブ
上記以外の配水小ブロックの境界バルブ
上記、「高」•「中」以外のバルブ
空気弁 幹線管路に設置している空気弁
上記以外の空気弁
減圧弁 幹線管路に設置している減圧弁
上記以外の減圧弁
消火栓 幹線管路に設置している消火栓
上記以外の消火栓
補修弁 幹線管路に設置している補修弁
上記以外の補修弁

2)点検の種類

点検には、日常点検、定期点検、詳細点検、臨時点検の4種類がある。

① 日常点検
日常の巡視等により、弁室の状況や弁栓類の外観等について確認する。

② 定期点検
弁栓類の重要度に応じた周期のもと日常点検で発見した不具合等を重点に定期的に調査・確認する。

③ 詳細点検
定期点検の結果を踏まえて機能低下が認められた場合や、弁栓類の重要度に応じた頻度に至った場合に機器類の分解等を行って実施する。点検に際してはメーカと協議することが望ましい。

④ 臨時点検
故障、事故、工事等により行うこととし、事象により点検内容は異なる。

3)点検頻度

弁栓類は設置目的、施設の重要度および使用頻度により点検の内容や頻度が異なるが、幹線管路等における目安を表2.3.2に示す。点検の頻度が「年1回」等とあるが、これは1台当たりの回数であり、数多くある弁栓類では、配水系統や配水ブロック等の単位で点検一巡する。

表2.3.2 点検の種類と目安の頻度(幹線管路等)
設置場所 機種 点検内容と頻度
道路下埋設 仕切弁 日常点検(目視) 年1回
定期点検(目視と作動) 5年に1回
詳細点検(分解) 20年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
空気弁 日常点検(目視) 年1回
詳細点検(分解) 10年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
消火栓 日常点検(目視と作動) 年1回
詳細点検(分解) 20年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
補修弁 日常点検(目視と作動) 年1回
詳細点検(分解) 20年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
道路下弁室内 仕切弁 日常点検(目視) 年1回
定期点検(目視と作動) 5年に1回
詳細点検(分解) 20年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
減圧弁 日常点検(目視) 年2回
定期点検(目視) 年1回
詳細点検(分解) 10年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
水管橋 空気弁 日常点検(目視) 年1回
詳細点検(分解) 10年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期
補修弁 日常点検(目視) 年1回
詳細点検(分解) 20年に1回
臨時点検(事象に応じて) 不定期

参考:「水道用バルブ類維持管理マニュアル」(日本水道協会)

4)点検箇所、点検内容および点検方法

弁栓類点検のうち、日常点検、定期点検方法を表2.3.3に示す。点検を受けての改善策の検討、改善策実施後の確認事項等は詳細版を参照のこと。

表2.3.3 弁栓類の点検箇所、点検内容および点検方法(その1)
対象 種類 点検箇所 点検内容
(異常の有無の確認)
点検方法 目安
頻度
仕切弁 日常点検 弁きょう内又はマンホール内 水没、土砂溜り 目視で確認 年1回
弁座部 全閉時の止水 弁を全閉し音聴棒又は圧力計で確認 年1回
開放ギア駆動部 錆、土砂等の固着、潤滑状態 目視で錆の有無等を確認 年1回
定期点検 全体 開閉状態全閉時の止水 開閉操作を行い、作動しない場合は2,3回繰返す 5年に1回
グランド部 開閉状態での漏水 目視で漏水の有無 を確認
弁きょう又は鉄蓋内の排水、土砂の排出を行う
5年に1回
空気弁 日常点検 全体 外観 目視で損傷個所の有無を確認 年1回
外面塗装 目視で錆の有無等を確認
開閉状態 開閉操作を行い、また、開であることの確認
フランジ部 漏水 目視で漏水の有無を確認
グランド部
弁箱・蓋等の耐圧接続部
空気孔部
減圧弁 日常点検 全体 異常音 聴音で確認 年2回
制御状態 圧力 0点の確認、圧力指示が正確であることを確認
圧力計の指示機能確認
主弁の開度 開度が適正範囲であることを確認
止弁の開度 正常な止弁開度であることを確認
定期点検 全体 外観 目視で損傷個所の有無を確認 年1回
外面塗装 目視で錆の有無等を確認
フランジ部 漏水 目視で漏水の有無を確認
グランド部
弁箱・蓋の接続部
開度計 よごれ 開度計の指示が読取れることを確認

参考:「水道用バルブ類維持管理マニュアル」(日本水道協会)

表2.3.3 弁栓類の点検箇所、点検内容および点検方法(その2)
対象 種類 点検箇所 点検内容
(異常の有無の確認)
点検方法 目安
頻度
消火栓 日常点検 全体 外観 目視で損傷個所の有無を確認 年1回
外面塗装 目視で錆の有無等を確認
開閉状態 開閉操作が正常にできることを確認
異常音 聴音で確認
フランジ部 漏水 目視で漏水の有無を確認
グランド部
弁箱・蓋等の耐圧接続部
弁座部
口金部 ホースの接続 ホースの脱着、漏水の有無を確認
補修弁 日常点検 全体 外観 目視で損傷個所の有無を確認
外面塗装 目視で錆の有無等を確認
開閉状態 開閉操作が正常にできることを確認
異常音 聴音で確認
フランジ部 漏水 目視で漏水の有無を確認
グランド部
弁箱・蓋等の耐圧接続部
弁座部
操作機 破損 開閉操作が正常に作動することを確認
開閉表示 よごれ 開閉表示を目視で確認

参考:「水道用バルブ類維持管理マニュアル」(日本水道協会)

5)点検結果の記録

① 点検記録表
日常点検、定期点検、詳細点検および臨時点検の結果を記録するもので、以下の項目を記載する。
・弁管理番号
・点検日
・点検結果(各点検項目の評価)
・損傷に著しい箇所があり早急な修繕工事が必要な場合や詳細な調査が必要な場合の具体的な損傷状況
・修繕工事を依頼する場合、依頼先の担当部門名

② 点検管理表
定期点検や臨時点検における劣化状況等の経年変化を管理するもので、以下の項目を記載する。
・点検日
・点検結果
・損傷状況
・修繕工事の依頼有無
※大型弁および幹線管路の弁栓類は、個々の弁栓類ごとに台帳で管理することが望ましい。(5.1図面および台帳参照)また、小型の弁栓類は点検記録管理表で不具合状況や対処方法を管理する。(弁栓類点検管理表、5.3保全記録参照)

6)点検記録の保管・蓄積

・点検結果は、点検記録表・点検管理表に記録し、常に把握できるようにする。
・点検データは電子化を行い、経年分析や原因分析等を行いやすいようにデータの蓄積を行う。
・委託報告書は電子化して保管・管理する。

(3)情報の活用

日常点検、定期点検、詳細点検、臨時点検の結果は、点検計画の見直しや修繕・更新計画の基礎情報として活用する。
弁栓類点検結果から得られる情報の活用方法を表2.3.4に示す。

表2.3.4 弁栓類点検の情報活用方法
目的 必要な情報 方法
弁栓類点検計画の見直し

・点検結果

・点検結果(劣化状況等)より、項目、頻度の見直しを行う。

修繕・更新計画の基礎情報

・点検結果

・経年変化の有無

・劣化の進行が見られる場合は、その原因分析を行う。

・劣化が著しい場合は、修繕・更新が必要である。

マニュアル作成項目に戻る