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マニュアル作成手引き

電気防食設備の点検

電気防食設備は、迷走電流等による鋼管の腐食劣化を防止するもので、腐食による漏水事故の軽減により発生を抑制し管路の長寿命化を図るものである。道路上に設置された電気防食設備について定期的に点検・調査を行い電食防止の機能を正常に発揮できるようにしておく。
また、管路の周辺状況が変化し、迷走電流等も変化していくことがありうるので、定期的に管対地電位測定等の調査を行う。
蓄積された点検情報は、電気防食設備の点検計画の見直しや修繕・更新計画立案の際に活用することができる。

(1)作業手順

作業手順

・点検頻度・方法の決定

・定期点検の実施
・干渉調査の実施

・防食効果の確認
・干渉電流の発生確認

・点検表へ点検結果を記録
・必要に応じて詳細調査や修繕工事を依頼

・防食効果の経年変化等から点検計画の見直し
・電気防食設備の劣化状況や原因分析結果を、修繕計画や更新計画の基礎情報をして活用

(2)実施方法

1)点検対象施設

埋設管等に設置されている全ての電気防食設備とする。
電気防食設備には、流電陽極方式と外部電源方式がある。
電気防食設備台帳(5.1図面および台帳参照)および電気防食設備一覧表(表2.5.1参照)で管理する。

表2.5.1 電気防食設備一覧表(例)
種別 場所 合計
軌道横断 ○○鉄道△△横断部・・・ ○箇所
海底配管 ○○~○○間、△△~△△間 ○工区

2)点検の種類

電気防食設備の点検には、定期点検と干渉調査がある。

3)点検の頻度

電気防食設備の定期点検および干渉調査は、一般的には年一回行うが、防食効果等の経年変化に応じて決定する。

4)点検方法

① 定期点検
•電気防食設備(外部電源装置、排流器等)の稼働状況を点検し、必要により出力の調整、消耗部品の交換、収納盤の清掃、補修塗装等を行う。
•被防食管路に設置してある電気防食用ターミナルにより管対地電位、管対軌条電位、Mg(又はAl)陽極発生電流等を測定し、被防食管路の腐食設状況を調査する。

② 干渉調査
•他団体の電気防食装置をON-OFFさせ、同時に被調査管路の電気防食用ターミナル等で管対地電位を測定し、その影響度合いを把握する。

5)点検項目

点検項目を表2.5.2に示す。

表2.5.2 電気防食設備の点検項目
種類 項目 内容
定期点検 管対地電位(P/S)測定
管対軌条電位(P/S)測定
10~15分間程度測定
同時測定
陽極発生電流(Mg,i)測定
ボンド電流測定
排流電流測定
10~15分間程度測定
外部電源装置・排流器の点検 電圧、電流、端子の確認等
干渉調査 管対地電位(P/S)測定
管対軌条電位(P/R)測定
10~15分間程度測定
同時測定
排流電流測定 10~15分間程度測定

• 一般に鉄の管対地電位(飽和硫酸銅電極基準)が-850mV以下(例えば-1000mV)に維持されれば防食されていることから、良好な状態と判断できる。なお、海水塩化銀電極基準の場合は-780mVである。
• 防食効果が低下した場合や被防食管路が防食状態にないと判断された場合は、電気防食設備の修繕や更新が必要となる。
• 管対地電位が防食基準電位より-100mV以上の場合は点検頻度の見直しや修繕が必要である。また、流電陽極が取付時質量の20%になった場合は、更新が必要となる。

② 使用機器
• 基準電極は飽和硫酸銅基準電極を使用する。
• その他(高感度記録計、シャント抵抗器、リード線、列車警報器等)

6)点検結果の記録

① 点検記録表
定期点検・干渉調査の測定結果と良否判定結果を記録するもので、以下の項目を記録する。
・点検対象設備 (施設名称、設置年月日、電気防食の方式)
・電位測定年月日
・点検結果 (電位、電流等測定結果、良否判定)
・判定結果 (防食効果の有無確認、経年変化や特異点の確認)

② 点検管理表
定期点検および干渉調査における管対地電位や排流電流の測定値や防食効果等の経年変化を管理するもので、以下の項目を整理する。
・管対地電位、管対軌道電位、発生電流の経年変化(前回測定値との差異)
・測定値の経年変化は、電気防食設備台帳(5.1図面および台帳参照)で管理しても良い。
・管対地電位等の測定値の経年変化グラフ

7)点検記録の保管・蓄積

・点検結果は、点検記録表・点検管理表に記録し、常に把握できるようにする。
・委託報告書は電子化して保管・管理する。
・点検データは電子化を行い、経年分析や原因分析等を行いやすいようにデータの蓄積を行う。

(3)情報の活用

定期点検と干渉調査に伴う管対地電位等の測定値は、グラフ等で整理し、経年変化状況および特異点を明らかにして防食効果が低下した場合、設備の修繕・更新の有無を判断する。
電気防食設備点検結果から得られる情報の活用方法を表2.5.3に示す。

表2.5.3 電気防食設備点検の情報活用方法
目的 必要な情報 方法
電気防食設備の点検計画の見直し

・点検記録の判定結果

・経年変化の有無

管対地電位が上昇する等、防食効果の経年変化がある場合は、点検頻度を高める等の見直しを行う。

電気防食設備の再検討 ・干渉調査結果 他の電気防食設備からの干渉や鉄道開通による漏れ電流の影響が懸念される場合は、防食対策の再検討を行う。
電気防食設備の点検・修繕・更新計画の基礎情報

・点検記録の判定結果

・経年変化の有無

・経年変化や特異点がある場合は、その原因分析を行い必要に応じて詳細調査を行う。

・防食効果が低下した場合や被防食管路が防食状態にない場合は、電気防食設備の修繕や更新を行う。

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