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マニュアル作成手引き

震災対策用貯水施設の点検

震災対策用貯水施設は、応急給水用の貯水施設であり、水道施設に直結して設置するものである。震災時等の確実で安全な飲料水確保のため、平常時における設備の点検・整備や水質検査に万全を期す必要がある。
蓄積された点検情報は、貯水槽等の点検計画の見直しや修繕・更新計画立案の際に活用することができる。

(1)作業手順

作業手順

・対象施設、点検頻度、点検方法等の計画を策定

・定期点検の実施
・臨時点検の実施

・貯水槽:水質検査、漏水、腐食等の確認
・付属設備:弁栓類の作動状況、弁室・人孔の滞水等の確認
・非常用給水設備:数量、損傷等の確認
・格納庫:損傷、塗装状態等の確認
・電気計装設備:作動状況の確認
・管理用地:フェンス、無断使用等の確認

・点検表へ点検結果を記録
・必要に応じて修繕工事を依頼

・点検結果を分析し、対象施設、点検頻度、点検方法等を見直し
・修繕計画、更新計画策定のための基礎情報として活用

(2)実施方法

1)点検対象施設

対象施設は、全ての震災対策用貯水施設を対象とする。貯水槽を消防と兼用する場合は、消防担当部局と調整して管理区分や管理方法を決定する。また、水質検査、弁栓類や弁室・弁きょう等の点検は、震災対策用貯水施設以外の検査・点検と併せて実施してもよい。

2)点検の種類

震災対策用貯水施設の点検には、定期点検と臨時点検がある。
① 定期点検
頻度や方法を定めて計画的に実施するもの。

② 臨時点検
道路管理者や利用者等からの通報、大雨や地震発生後(震度4以上等)などに臨時に実施するもの。

3)点検方法、点検項目および頻度

定期点検の方法・項目・頻度は表2.6.1を標準とする。

表2.6.1 震災対策用貯水槽の定期点検の項目・方法・頻度
設備名 部位等 点検項目 点検方法 頻度
貯水槽 水質検査 ・流出側の残留塩素濃度、濁度等 ・定期検査
・自動水質監視装置
年2回
貯水槽外部 ・外部漏水の有無 ・目視 年1回
貯水槽内部 ・内面劣化状況、漏水の有無、流入・流出管及び支持金物の腐食状況
・清掃、夾雑物の除去
・槽内を空にして目視 5年に1回
貯水槽回り配管及び付属設備 仕切弁、緊急遮断弁、ストレーナ、空気弁、消火栓 ・開閉確認、腐食状況
・緊急遮断弁の作動状況、部品状態の確認(製造者等への委託点検)
・緊急遮断弁の閉止状態での放水試験
・目視
・作動確認
年1回
弁室・人孔 ・鉄蓋の据付及び周囲の舗装の状態
・弁室・人孔の破損、滞水、滞泥
・目視 年1回
非常用給水設備 ポンプ、給水管、ホース類、給水栓、発電機、燃料、工具 ・数量の確認
・外観点検(損傷、変形、腐食の有無、塗装状態等)
・バルブ、蛇口等の作動確認
・ホース類の良否確認
・通水試験
・ポンプの試運転及び機能確認
・発電機の試運転及び機能確認
・目視
・作動確認
年1回
格納庫 格納庫 ・外観点検(損傷、変形、腐食の有無、塗装状態)
・清掃
・目視 年1回
電気計装設備 受配電設備、水質計器、監視装置 ・作動状況の確認
『水道維持管理指針2006(日本水道協会)』等を参考とする
・目視
・作動確認
設備種類による
管理用地 管理用地 ・フェンス、無断使用、不法投棄等 ・目視  

4)点検結果の記録

① 点検記録表
定期点検および臨時点検の結果を記録するもので、以下の項目を記載する。
・震災対策用貯水施設の名称、台帳番号
・点検日
・点検結果(各点検項目の評価)
・損傷に著しい箇所があり早急な修繕工事が必要な場合や詳細な調査が必要な場合の、具体的な損傷状況
・修繕工事の依頼をする場合、依頼先の担当部門名

② 点検管理表
定期点検や臨時点検における劣化状況等の経年変化を管理するもので、以下の項目を記載する。
・点検日
・点検結果(各点検項目の評価)
・損傷状況
・修繕工事の依頼有無

5)点検記録の保管・蓄積

・点検結果は、点検記録表・点検管理表に記録し、常に把握できるようにする。
・点検データは電子化を行い、経年分析や原因分析等を行いやすいようにデータの蓄積を行う。
・委託報告書は電子化して保管・管理する。

(3)情報の活用

定期点検および臨時点検の結果は、点検計画の見直しや修繕・更新計画の基礎情報として活用する。
震災対策用貯水施設の点検結果から得られる情報の活用方法を表2.6.2に示す。

表2.6.2 震災対策用貯水施設の点検の情報活用方法
目的 必要な情報 方法
震災対策用貯水施設の点検計画の見直し

・水質検査結果

・点検結果(劣化状況、作動状況等)

・貯水槽内の水質の悪化が見られる場合は、検査項目や検査頻度の見直しを行う。

・貯水槽・付属設備等の腐食や作動不良等、劣化の進行が見られる場合は、点検頻度を高める等の見直しを行う。

・管理用地の状況等により、環境整備の頻度や住民広報を見直す。

震災対策用貯水施設の修繕・更新計画の基礎情報

・点検結果(劣化状況等)

・経年変化の有無

・貯水槽・付属設備等の劣化の進行が見られる場合は、その原因分析を行い必要に応じて詳細調査を行う。

・緊急遮断弁等の弁栓類やポンプ・発電機の作動不良が見られる場合は、必要に応じて精密点検を実施する。

・劣化が著しい場合は、修繕や更新が必要である。

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