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マニュアル作成手引き
管体腐食度調査
管体腐食度調査は、管路周囲の土壌および地下水の状況と露出した管路の外面腐食状況を調査し、管外面の腐食に起因する漏水等の事故を未然に防止するとともに、今後の効率的な管路更新計画立案の基礎情報を得ることを目的とするものである。
他の業務等と併せて計画的にデータを取得し、調査結果に基づく老朽度や余寿命の診断を行うなど、その結果を修繕や更新計画へ反映させることが必要である。
(1)作業手順

・調査対処箇所の選定
・調査方法(単独調査/他業務での調査)の決定
・埋設状況調査
・土壌及び地下水の測定
・土壌及び地下水の腐食性評価
・管厚の測定
・外面腐食深さの測定
・ボルト・ナットの老朽度評価
・点検表へ調査結果を記録
・調査結果等から調査計画の見直し
・調査結果に基づく老朽度や余寿命の評価
・評価結果を維持管理計画や修繕・更新計画の基礎情報として活用
(2)実施方法
1)調査対象箇所の選定
・調査対象の管種は、鋳鉄管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管とする。
・調査対象地区は、配水区域全体を対象とするが、腐食等による漏水や破裂事故が発生している地区や腐食性土壌がある地区等を優先的に実施する。
・対象管路の選定においては、事故時の影響度も考慮した上で基幹管路等を優先的に実施する。
・また、管路の腐食状況が確認可能な工事に合わせて調査を実施する場合は、関連部署や契約業者等と打合せを行い、調査地点の選定を行う。
2)調査方法
① 埋設環境調査
a)埋設状況調査
現地にて調査する項目を表3.4.1に示す。
調査項目 | 調査内容 |
---|---|
管路情報 | 管種、口径、布設年度(製造年)、布設環境(地区)、占用位置、継手形式、防食仕様 |
埋設状況 | 土被り、埋戻し状況、土質・土色、地下水の有無、地下水の水位、鉄道からの離隔、隣接構造物の有無 |
b)土壌および地下水の測定
管上、管横および管下等の異なる複数の土壌および地下水が認められた場合は、地下水について測定する項目を表3.4.2に示す。なお、土壌は現地で測定するが、採取して室内で測定することも可能である。また、土壌抽出水は採取した土壌について室内で測定し、地下水は採取し室内で測定する。
土壌試料 | 測定項目 | 現場 | 室内 |
---|---|---|---|
土壌 | 土質、土色、比抵抗、Redox電位、pH値、水分(含水比)、硫化物の有無、硫黄含有率 | ○ | ○ |
土壌抽出水注1 | 比抵抗、pH値、硫酸イオン含有量、塩素イオン含有量、蒸発残留物 | ― | ○ |
地下水 | 比抵抗、pH値、硫酸イオン含有量、塩素イオン含有量、蒸発残留物 | ― | ○ |
注1) 採取土壌を乾燥させた後、質量比2.5の純水を加えて24時間放置させてできる上澄み液を遠心分離によって不純物を除去した溶液のことである。
c)土壌の腐食性評価
土壌の腐食性を米国国家規格ANSI/AWWA C105/A 21.5-2010「Polyethylene Encasement for Ductile Iron Pipe Systems(ダクタイル鉄管類のポリエチレン装着)」の付録の項に示される基準を用いて評価する。(資料3 参考資料 参照)
② 管体腐食調査
管体腐食調査は図3.4.1および図3.4.2に示すように、継手部を含む管軸方向2m程度の全周が露出された管体を調査対象として行う。
図3.4.1 掘削平面図
図3.4.2 掘削縦断図
a)管厚の測定
管外面に腐食が生じていない位置で、健全部の管厚を超音波厚さ計で測定する。
b)腐食深さおよび腐食の大きさの測定
管外面の付着物をワイヤーブラシやテストハンマー等で除去した後、目視で腐食部を確認する。確認された腐食部の腐食深さをデプスゲージ(孔食計)で測定し、大きさ(長径×短径)をスケールで測定する。なお、測定後、補修用塗料で塗装補修する。
③ ボルト・ナット腐食調査
a)ボルト・ナットの腐食調査
露出した継手部でT頭ボルト・ナットの腐食状況を確認し、管頂部、管右部、管底部および管左部の4組を老朽度評価用のサンプルとして採取する。
b)ボルト・ナットの老朽度評価
採取したT頭ボルトとナットは、表面の付着物をワイヤーブラシ等で除去した後、表3.4.3および図3.4.3の基準を用いて老朽度ランクを評価する。
老朽度ランク | 判断基準 | 対策例 | |
---|---|---|---|
状況 | 定義 | ||
Ⅰ | 腐食程度大 | ボルト径の減少が顕著,又はナットが著しく腐食 | 管路更新を最優先に検討1) |
Ⅱ | 腐食程度中 | ボルトのネジ谷部まで腐食,又はナットの角が全体的に腐食 | 管路更新を優先的に検討2) |
Ⅲ | 腐食程度小 | ボルトのネジ山部のみ腐食,又はナットの角の一部が腐食 | 継続的な調査の実施 |
Ⅳ | 良好 | 腐食なし | 同上 |
注1) ボルト・ナットの腐食が著しい場合は,継手の止水性能が低下していると想定されるため,管路更新の検討が必要である。
2) ボルト・ナットが腐食している場合は,管体も同様に腐食していることが想定されるので継手部全体を含めた管路全体の調査・診断を行い,管路更新の検討が必要である。
出典:「水道施設更新指針(平成17年5月)」(日本水道協会)
図3.4.3 ボルトの老朽度ランクの判断基準例(水道施設更新指針(平成17年5月))
3)調査結果の記録
① 埋設状況
② 土壌および地下水の腐食性
③ 腐食深さおよび大きさ
④ ボルト・ナットの腐食状況
⑤ 写真
4)調査記録の保管・蓄積
・調査結果は、電子化して保管・管理する。
・調査データは電子化し、経年分析や腐食性の傾向の分析等が行えるように、データの蓄積を図る。
・委託報告書は電子化して保管する。
(3)情報の活用
調査結果により、管路の埋設環境の腐食性を評価し、老朽度や余寿命の予測を行い管路更新計画の立案や検証に用いる。また、必要に応じて防食対策の見直しを行う。
管体腐食度調査結果から得られる情報の活用方法を表3.4.4に示す。
目的 | 必要な情報 | 方法 |
---|---|---|
管体腐食度調査計画の見直し | ・土壌の腐食性調査結果 |
土壌の腐食性の評価結果により、腐食の危険性が高い地区を優先的に調査できるよう対象地区や頻度を見直す。 |
・管体及びボルト・ナット腐食度調査結果 |
実際の腐食の程度と布設後の経過年数から腐食速度を予測し、調査対象路線と調査頻度を見直す。 |
|
維持管理計画の基礎情報 | ・土壌の腐食性調査結果 ・管体及びボルト・ナット腐食度調査結果 |
土壌の腐食性が高い地区や腐食が進行している路線は、漏水調査や弁栓類点検の優先順位を高くするなど維持管理計画策定の基礎情報として用いる。 |
修繕・更新計画の基礎情報 | ・土壌の腐食性調査結果 ・管体及びボルト・ナット腐食度調査結果 |
調査結果より老朽度ランク付けや余寿命の予測を行い、修繕や管路更新計画の基礎情報として用いる。【参考図書:水道施設更新指針(日本水道協会)】 |
防食対策の検討 | ・土壌の腐食性調査結果 |
土壌の腐食性結果により、鋳鉄管では外面防食対策、鋼管では電気防食を施す。 |