ホーム > 水道管路を維持するために > マニュアル作成手引き

マニュアル作成手引き

運転記録

管路施設における水量・水圧・水質の記録は、浄配水場等の運転管理、配水調整、維持管理計画の見直し、管路の修繕・更新計画立案時等の基礎データとなるため、利用目的に応じ必要なデータを記録して管理する必要がある。

(1)運転記録の整備および活用手順

作業手順

・運転記録整理のルールを作成する。
・記録表の作成
・管理台帳の整備、データベースの構築

・常時測定及び調査の記録を作成

・台帳やデータベースの随時更新

・マッピングシステム等関連データベースへの反映による情報の共有化

・記録方法、更新方法や共有化方法の見直し
・維持管理計画の見直し
・修繕・更新計画立案に活用

(2)実施方法

1)対象

対象とする運転記録は、表5.2.1のとおりとする。これらの情報は、浄水場や配水場等の施設で測定されるものと管路施設で測定されるものの両方を含む。

表5.2.1 管路施設の運転記録
分類 内容
水量記録 ①取水量、導水量、送水量、配水量
②有収水量、無収水量、無効水量
水圧記録 ①静水圧、動水圧
②動水勾配
③管、バルブの損失水頭
水質記録 ①残留塩素濃度
②配水システムで変化する可能性のある項目

また、測定方法はその目的、頻度から表5.2.2のように分類される。

表5.2.2 測定方法
分類 内容
常時測定 運転状況を管理するため、施設で常時測定するもの
定期測定 管路内での状況把握のため、定期的に調査するもの
随時測定 問題発生箇所の原因究明のため、調査するもの

2)管理方法の策定

・常時測定の結果は、日報、月報を作成してデータベースとして管理する。
・ 定期測定や随時測定の結果は、マッピングシステムに取り込むなど、電子化して活用する。電子化は、情報の更新や共有化に有効な手段である。

3)記録頻度

運転記録の頻度を表5.2.3に示す。運転記録業務を効率的かつ継続的に実施するために、 記録表の様式を事前に定めておく。

表5.2.3 運転記録の頻度
記録項目 記録の目的、種類 記録頻度
水量記録 ①運転状況の把握(取水量、導水量、送水量、配水量) 連続して測定し、時間、日、月、年などで集計する。
②配水量分析(有収水量、無収水量、無効水量) 有収水量は、毎月、2か月に1回など、検針頻度に合わせる。無収水量・無効水量は都度計測し、有収水量と同じ周期で集計する。
③配水流量制御(流量及び水圧調整弁等での配水量) 連続して測定する。
水圧記録 ①配水区域全体の一斉調査(静水圧、動水圧) 3年から5年に1回
②問題箇所の調査(動水勾配、管・バルブの損失水頭) 随時
③配水流量制御(流量及び水圧調整弁等での水圧) 連続して測定する。
水質記録 ①給水栓での色、濁り及び消毒の残留効果(残留塩素濃度) 1日1回以上
②配水区域全体の一斉調査(残留塩素濃度、pH値等) 年1回程度(夏期)
③問題箇所の調査(必要な水質項目) 随時

4)データの更新・バックアップ

• 記録(データ)の管理で最も重要なことは情報の正確さであり、最新の情報に適時更新する。
•日常使用するものと別途、定期的にバックアップを行い、データの二重化と分散化を行う必要がある。広域災害に備えてバックアップデータは遠隔地での保管が望ましい。

(3)情報の活用

運転記録については、各関係部署(浄水部署、配水部署等)と情報を共有し、必要な集約・確認等を行う。
運転記録から得られる情報の活用方法を表5.2.4に示す。

表5.2.4 運転記録の情報活用方法
目的 必要な情報 方法
運転記録の管理方法の見直し

・運転記録全般

運転記録の水質等の情報は、測定場所・項目・頻度の見直しに活用できる。

維持管理計画の見直し

・運転記録全般

・運転記録を元に維持管理計画の策定及び見直しを行う。

・漏水調査計画策定時に、配水量分析結果を反映させ効果的な調査箇所の選定や優先順位の検討等に用いることができる。

・水量、水圧調査結果は、弁栓類点検の頻度見直しの基礎情報となる。

・水質調査結果は、管内調査計画の検討に用いることができる。

管路の修繕・更新計画の立案

・運転記録全般

・漏水や管体腐食など管路の劣化状況を把握するための基礎情報となり、管路の機能診断に用いることができる。

・配水場等の施設配置、管網整備等の水道システムの計画立案の基礎情報となる。

マニュアル作成項目に戻る