成果概要
はじめに
今日、わが国の水道は97%を超える高普及率を達成し、今後は、環境保全を考慮しつつ、安全・安心な水道水を持続的に安定供給していくことが必要不可欠であり、人為的な事故や自然災害による事故等に対応すべく適切な施設の更新や維持管理が強く求められています。
水道管路は、その多くが昭和30年代後半から40年代の水道整備拡張期に布設され、老朽化が進んでいます。これらを適正なレベルで維持管理し計画的に更新していくことが、今後の水道経営にとって重要課題であり、老朽管路の計画的更新を進めていく上で住民の理解と信頼の確保が極めて重要となっています。
このような状況を背景に、財団法人水道技術研究センターでは、平成17年度~平成19年度に実施したNew Epochプロジェクトにおける管路施設の機能診断・評価に関する研究成果を踏まえ、e-Pipe(enhancement of Pipe renewal)プロジェクトと題して、現在更新時期を迎えている水道施設の効率的・計画的な更新の推進を図り、安全・安心でおいしい水の安定的な供給に資することを目的として、平成20年度~平成22年度の3ヵ年計画で研究を実施しました。
研究成果
本研究では、2つの研究グループで4つの研究課題に取り組んだ結果、次の成果を得ました。
厚生労働科学研究費補助金による研究
「健康リスク低減のための新たな管路更新手法の開発に関する研究」
(1)基幹水道施設の機能診断手法の検討
従来の水道施設の機能診断手法は、比較的実施難度が高く、また個別の水道施設ごとの評価手法のみでした。本研究では、小規模事業体の職員が日常管理から得られるデータを元に、簡便かつ合理的な施設評価が実施できる手法を開発しました。
水道施設機能診断マニュアルのお求めはこちら リンク
(2)施設更新の優先度を考慮した地震による管路被害の予測等
近年、水道施設に大きな被害が生じる地震が頻発しており、地震対策の重要性がますます高まっています。本研究では、近年の大規模地震による管路被害を解析し、標準被害率に管種、微地形など各要因の補正係数を乗じて被害件数を予測する手法を開発しました。
共同研究費による研究
「持続可能な水道サービスのための管路技術に関する研究」
(1)管路の機能劣化予測及びハザードマップに関する研究(機能劣化予測に関する研究/ハザードマップ作成に関する研究/直接診断に関する研究)
管路の機能劣化予測では、アンケート調査で過去50年分の漏水事故データを収集・解析し、50年超の管路における事故率の推定式を開発しました。また、ハザードマップに関する研究では、アンケート調査を参考に、管路事故率、断水人口、事故リスクの3種類についてシステムを開発しました。
(2)管路施設のLCA研究、事業体及び住民に対する事業・更新PR手法に関する研究(LCAに関する研究/PR手法に関する研究)
管路施設のLCA研究では、水道における環境負荷低減目標を達成するための準備として、施設建設・更新も考慮した環境対策を評価できる「水道版LCA手法」を開発しました。また、水道事業の更新PR手法に関する研究では、「老朽管更新」をテーマにクロスメディア手法によるWEB誘導型のPR手法の効果について実験的検証を行いました。
持続可能な水道サービスのための管路技術に関する研究(e-Pipe)報告書のお求めはこちら
リンク
研究組織
本研究は、大学、水道事業体及び企業の参画を得て共同研究体制を組織して実施しました。
研究プロジェクト組織図