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マニュアル作成手引き

保全記録

管路の保全を適切に行うためには、日々の点検、調査、修繕等の管路保全業務の記録を作成し、保管・活用することが重要である。
保全記録を収集・分析し管路の事故等の傾向や劣化状況を把握することにより、保全業務の最適化や信頼性向上を図ることが必要である。長年蓄積された保全記録は、アセットマネジメント(資産管理)を実践する際の基礎となる情報である。

(1)保全記録の整備および活用手順

作業手順

・保全記録整理のルールを作成する。
・記録表の作成
・管理台帳の整備、データベースの構築
・台帳、データベース整備の年次計画策定

・点検、調査の記録を作成
・必要に応じて修繕工事を依頼
・修繕、他工事、苦情データ等の記録を作成

・台帳やデータベースの随時更新

・マッピングシステム等関連データベースへの反映による情報の共有化

・記録方法、更新方法や共有化方法の見直し

・維持管理計画の立案、見直し
・蓄積された保全記録を元に健全度評価や更新優先度評価に活用

(2)実施方法

1)対象

管路の保全業務としての点検、調査、修繕等を表5.3.1に示す。これらの業務のうち、実施している業務の記録(点検記録・調査記録等)を保全記録として管理する。

表5.3.1 管路保全業務
日常及び
定期点検
管路パトロール、水管橋等点検、弁栓類点検、弁室・弁きょう等点検、電気防食設備の点検、震災対策用貯水施設の点検
詳細調査 漏水調査、管内調査、洗浄作業、管体腐食度調査、水量・水圧・水質調査
修繕等 修繕工事、事故対応、応急給水、他工事立会、利用者対応

2)管理方法の策定

・保全記録の保管や更新のルールを作成し、管理台帳やデータベースで一元管理するとともに情報の共有化を図る。
・電子化は、情報の更新や共有化に有効な手段であるため、記録は電子化して保管する。
・スマートフォンやタブレットを用いた点検システムの導入等、ICTを活用して記録の入力や履歴情報の参照の効率化を図ることが望ましい。

3)記録方法

・保全業務を効率的かつ継続的に実施するために、点検、調査、修繕等の内容を記録する記録表の様式を事前に定めておく。
・保全業務の均質化と精度向上を図るため、保全業務の内容(点検、調査、修繕等の項目、方法等)と判断基準(異常の有無等)を記録表で明確にする。
・台帳や管理表等で、不具合や経年変化の履歴を管理する。
・水管橋、大型および幹線管路の弁栓類および弁室・弁きょう、電気防食設備、震災対策用貯水施設等、個別の管理が有効な施設は、台帳で履歴を管理することが望ましい。(図面および台帳参照)
・埋設管路や小型の弁栓類、給水装置等の小規模で個別の管理が困難な施設は、点検記録管理表で不具合状況や対処方法を管理する。

4)データの更新・バックアップ

・日常点検、定期点検、詳細調査、修繕等の保全業務を通じて随時データを収集する。
・記録(データ)の管理で最も重要なことは情報の正確さであり、最新の情報に適時更新する。
・日常使用するものと別途、定期的にバックアップを行い、データの二重化と分散化を行う必要がある。広域災害に備えてバックアップデータは遠隔地での保管が望ましい。

(3)情報の活用

・情報の共有化
保全記録については、各関係部署と情報を共有し、必要な集約・確認等を行う。保全業務毎の主な情報共有化の具体例を表5.3.2に示す。詳細な活用方法は、各維持管理項目のマニュアルを参照のこと。

表5.3.2 情報共有化の具体例
保全業務 関連部署 情報共有化
管路パトロール 維持管理 漏水や路面等の状況により点検頻度の見直し
工事 漏水等の状況により修繕依頼
定期点検 修繕 点検の結果不具合箇所があれば修繕工事を依頼
維持管理 劣化が進行している地域は点検頻度の見直し
原因が不明な場合は詳細調査を計画
計画 点検結果を更新計画に反映
詳細調査 計画 調査結果を分析し更新計画に反映
維持管理 必要に応じて別の調査を計画
修繕工事
事故対応
維持管理 修繕・事故の多発地点は、点検頻度の見直し、原因分析のための詳細調査の検討
計画 修繕・事故の多発地点情報は、その原因情報とともに更新計画への反映
維持管理 修繕・事故時に図面及び台帳の情報確認と修正
他工事立会 維持管理 図面及び台帳の情報確認と修正
利用者対応 維持管理 苦情の場合は詳細調査を実施し原因究明
工事 通報の場合は修繕や事故の対応

・検証と見直し
発生した事故や実施した修繕などについて保全記録を継続的に検証し、点検記録の管理方法や点検方法・管理措置・対応などについて維持管理計画の見直しを行う。
・管路の修繕・更新計画への活用
長期間蓄積された保全記録は、水道施設の健全度の状態、故障、事故の傾向等を知るための基礎データとなり、管路の機能診断と健全度評価や優先度評価等に活用できる。また、配水場等の施設配置、管網整備等の水道システムの計画立案の基礎情報となる。
保全記録から得られる情報の活用方法を表5.3.3に示す。

表5.3.3 保全記録の情報活用方法
目的 必要な情報 方法
保全記録の管理方法の見直し

・保全記録全般

保全結果の記録方法や更新情報、電子化方法や共有化方策の見直しに活用する。

維持管理計画の立案、見直し ・保全記録全般

保全記録を元に維持管理計画の策定及び見直しを行う。例えば、漏水調査計画策定時に、保全記録の分析結果を反映させ効果的な調査箇所の選定や優先順位の検討等に用いることができる。

管路の修繕・更新計画の基礎情報 ・保全記録全般

保全記録は管路の劣化状況を把握するための基礎情報となる。蓄積されたデータを元に管路の機能診断に用いることができる。

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